『人生で大切な五つの仕事:スピリチュアルケアと仏教の未来』という本を、改名して新装版として再出版したものです。最初に出したものは、高野山大学にスピリチュアルケア学科を創設するということでお声掛けいただき、学問として新しい領域を切り開いてゆくために、仏教瞑想を土台にしながらも、心理療法の基本をしっかりと取り入れて、日本の現場に根を下ろしてゆけるように心を砕いて書いたものです。そしてその流れから、仏教が再生してくれることを願って書きました。

 「5つの仕事」というのは、新学科開設のための準備調査でサンフランシスコを訪れた時に出会ったホスピス医のスコット・エヴァリーから教えてもらったことです。彼は80年代に信州大学でホスピス論を教えていたということで、日本から来た私に貴重な学びの機会をくれました。

  1. 人生の意味を見つける
  2. 許し・許される
  3. 「愛しているよ」を伝える
  4. 「ありがとう」を伝える
  5. 「さよなら」を告げる。

 彼が医長をしていたペタルマ・ホスピスなどを案内してもらいながら、「こちらではこんなことが人生の最期に大切になるように見えるんだけど、日本ではどうかな?」と問いかけられた時、「日本でも全く同じだと思います。この5つのテーマ、教える時に借用させてもらえますか?」と許しを得て、本書のタイトルにも使わせていただきました。

 本書の第6章「目覚めよ仏教」で紹介した、コンステレーションを読み取る手法は、家系図をコマにして動かしながら人間関係を探ってゆく私が開発した手法です。檀家さんと寺院をつなぐ過去帳を、家族療法的な視点を交えながら現代社会に活かしてゆくことで、生と死をつなぐ新たなコミュニティ創出のきっかけになればと願っています。

 新装版までの間には、東日本大震災の直後にトラウマや悲嘆の研究者たちとJDGS(Japan Disaster Grief Support project:災害悲嘆支援プロジェクト)の創設にかかわったこと、マインドフルネスやコンパッションに基づいた医療者の燃えつきプログラムG.R.A.C.E.の日本招聘に関わったことによる新たな学びがありました。それらは、私のスピリチュアルケア構築にとってとても貴重な視点を提供してくれました。社会に新しいものを導入する苦労を共にする中で学ばせていただけることはとても幸せな巡り合わせなのだと思います。

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