スピリチュアルケアのはじまりは、シシリー・ソンダースが聖クリストファーズ・ホスピスを創設したことによる現代的ホスピス運動に端を発しています。ソンダースの人生についてはシャーリー・ドゥブレイの『シシリー・ソンダース』によくまとめられています。看護師としてキャリアを始めたソンダースは、背中の痛みから医療社会福祉の道に転身し、そこでカトリックの慈善の姉妹会が運営する看取りの場でモルヒネを経口投与して意識を混濁させることなく上手に痛みをコントロールしていることを学び、一念発起して医師の資格を取ります。こうして痛みの医学的な研究を積み重ねたことが、伝統的なキリスト教の中で培われてきた霊的ケアの営みが現代医療の場に花咲く機会が得られたのだと思います。
彼女は、①モルヒネを使って身体の痛みを取ること、②患者の全人的な痛みに対してチームによる全人的なケアを提供していくこと、③そのためにベッドサイドでの痛みの研究とチームによる情報共有という教育的要素が統合されること、この三本柱でホスピスを構想していたようです。スピリチュアルケアは、この全人的なケアのうちの、身体的ケア、心理的ケア、社会的ケアによっては対応しきれない深い存在・魂の痛みとしてのスピリチュアル・ペインに対するケアとしてとらえられています。スピリチュアルな痛みへのケアがなされることによって、身体的な痛みや心理的痛み、そして社会的痛みへの対応力も高まってくるのです。
私が2006年から高野山大学で構築してきたスピリチュアルケア観、具体的な援助法、それを支える諸理論については、日本におけるスピリチュアルケアのパイオニアである窪寺俊之先生との共著『スピリチュアルケアへのガイド』にまとめてあります。