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マインドフルネスとは

 マインドフルネスは、分子生物学者のジョン・カバットジンが1979年に「マインドフルネスに基づいたストレス低減法(MBSR: Mindfulness based Stress Reduction) 」を創始したことによって始まった心と身体の総合的なトレーニング体系の現代的なムーブメントです。インテイクとフォローアップの質問紙が充実していて統計的な解析がなされていたために、EBM(Evidence Based Medicine: 根拠に基づいた医療)の先駆けとなり、医療や心理療法のメインストリームに入ることができました。

 MBSRに基づいて作られたマインドフルネス認知療法(MBCT)がうつ病の再発予防に効果があることが検証されたこと、脳科学研究によってマインドフルネストレーニングによって脳が実際に変化する神経可塑性が証明されたことなどによって一気にブームが広まり、今では企業研修から矯正教育、そして賛否両論はあるものの軍隊でのトレーニングにも取り入れられるようになってきました。

 しかし、最近ではこうしたブームとバランスをとるかの如く、マインドフルネスの有害事象に関する研究も進められ、身体感覚に注意を向けることによる不安やトラウマ記憶が喚起されやすいことなども報告され、集中的リトリートによってこうした現象が起こりやすいことなども報告されるようになってきています。

 こうした流れの中で、マインドフルネスが個人の実践に限定されることなく、関係性の中で応用され、倫理や社会正義の側面でも重要な役割を果たせるような新しいアプローチも生まれつつあります。それを象徴するのが、トラウマ治療へのマインドフルネスの応用です。

 一方、マインドフルネスの原点である仏教瞑想における念処の実践では、自らの呼吸、身体感覚、感情や思考などを見つめるだけではなく、他人の呼吸、自分と他者の間での呼吸なども見つめることが説かれています。つまり、もともとのブッダのマインドフルネス(漢訳仏教では「念」)は間主観的な実践として説かれていたのです。多くの仏弟子の中には、深い心の傷を負って、ブッダの教えに救いを求めて出家した者たちも少なくなかったでしょうから、ブッダのマインドフルネスにはトラウマの癒しも含めて解脱への道のりが説かれていたはずです。

 マインドフルライフ研究所では、常にブッダの教えに立ち返りつつ、現代的なマインドフルネスを探求して、皆さんのニーズに合わせてお届けしてゆこうと思っています。